決めたことを、
やり切れる会社へ。
前の会社にいた頃、ある中堅の機械メーカーの中期経営計画をまとめたことがあります。数か月かけて市場を調べ、製品ごとの採算を洗い出し、分厚い計画書にして取締役会で説明しました。社長から丁寧なお礼の言葉をいただき、私は良い仕事をしたつもりでいました。
一年ほどたって別の用件で伺うと、その計画書は応接室の棚に、お渡ししたときの姿のまま並んでいました。工場の朝礼で話されていたのは、先月の不良の件数と、来週の段取りのことだけです。計画に書いた目標の数字を知っている人は、現場にはほとんどいませんでした。
恥ずかしい話ですが、当時の私は、計画が動かないのは実行する側の問題だと考えていました。分析に誤りはなかった、と。報告書の出来ばかりを気にして、翌月の工場で何が起きるかを考えていなかったのは、私のほうでした。
正しい計画と、動く計画は、
別のものだ。
そう認めるまでに、ずいぶん時間がかかりました。それからしばらく、以前に計画をお納めした会社を、用事をつくっては訪ねて回りました。計画が動いていた会社には共通点がありました。毎月その数字を口にし、遅れれば理由を聞きに行く人が、社内に必ずいたのです。
2009年、生まれ育った東雲県で3人の仲間と当社を立ち上げたのは、計画書を納めた「後」の仕事をしたかったからです。
地域の中堅企業には、大企業のような経営企画の部署はありません。計画を任された部長は、同じ週に営業会議にも出て、採用の面接もしています。社長は、翌月の資金繰りと大口の取引先への対応で手一杯です。足りないのは分析ではありません。決めたことを毎月の仕事に落とし込み、止まりかけたときに声をかける、実行の伴走です。そのために、私たちは3つのことを約束しています。
現場で決める。分析は事務所でできますが、結論は現場でしか出せません。ある会社では、出荷が遅れる原因を何か月も会議室で議論していましたが、朝の倉庫に立ってみると、答えは伝票を置く台の位置にありました。提案の前には工場や店舗、営業所に通い、朝礼に立ち会い、社員食堂で同じ昼食をいただきます。
社内に残す。私たちは、いずれ御社を離れます。離れた翌月から会議が回らなくなるなら、その支援は失敗です。手順と判断基準は、私たちの用語ではなく御社の言葉で文書にします。支援の終盤には定例会の進行を社内の担当の方にお任せし、私たちは後ろの席で聞く側に回ります。担当の課長が私たちの資料を一枚も使わずに会議を終えた日が、本当の引き継ぎの日です。
数字で約束する。着手の前に、何が・いつまでに・どれだけ動けば成功かを、経営陣の皆さんと合意します。毎月の報告は、必ずその数字から始めます。動かなかった月は、動かなかったと最初に書きます。耳の痛い報告になることもありますが、そのほうが次の手を早く打てます。
支援の領域は、経営戦略から始まり、組織・人事、業務改革・DXへと広がりました。それでも、やっていることは創業の頃から変わりません。現場に通い、社内の方と同じ会議に出て、数字で報告する。それだけです。
創業から17年がたち、ご支援した会社は420社になりました。これからの十年、地域の多くの会社が経営者の交代を迎えます。次の社長が、先代の勘ではなく、自社の数字と自分たちの言葉で計画を描けるように。2021年に経営幹部の育成研修「次の十年の経営塾」を始めたのも、そのためです。私たち自身も、この地域で育った若い人を採用し、現場に出して育てています。
私たちの仕事の出来は、私たちが去った後に分かります。「あのとき決めたことが、いまも続いている」。十年後にそう言っていただける会社を、東雲から一社でも多く増やしていきます。
株式会社あおき経営パートナーズ
代表取締役朝倉 恒一
